蝶は老け顔と舞う。

蝶は老け顔と舞う。
あの夜から五年程が経った朝。 十歳くらいの少年が、母から夜空の色と褒めてもらった自慢の髪を靡かせ、父から貰った英雄の本を、未だ小さい手で大切に抱えて村の道を走っていた。 「あら。プシュケちゃんじゃない?」洗濯中だった婦人が、頬に手を当てて言う。 「ほんとね。あの子まだ英雄を夢見てるみたいよ。不老不死になりたいんだとか。」向かいの家の、婦人が返す。 「なってどうするのよ?」 「さあ?英雄のように、善徳を積んで武神にでもなりたいんじゃないかしら。」婦人がそれに答える。 彼女達のこの会話は全て、例の少年・プシュケには筒抜けだった。それでも顔色を変えずに走るのは、単に彼女達の言葉に反応してしまったら負けだというプライド故であった。つまり内心、プシュケは腹が立って仕方がなく、いつも見返してやりたい気持ちでいっぱいなのである。 走って走って、いつもの丘の大木に腰掛ける。そして英雄の本を開くと、プシュケは話に入り込む。本を読む時のプシュケは、鉄壁の集中力を誇る。この状態のプシュケは何をされても、よっぽどでない限り気付けない。故に、鉄壁である。 プシュケは本が好きだ。とりわけ、この英雄の本は何度読んでも自分を飽きさせる事なく、本の世界に連れて行ってくれる。プシュケにとって本は、自分を別世界へ連れ去ってくれる唯一の癒しなのだ。
あいびぃ
あいびぃ
初めまして、あいびぃです! 見つけてくれてありがとう♪ 私自身、生粋のアニオタ・漫画オタなのでファンタジーが多めになってます…多分。 詳しいことは「自己紹介」にて! まだまだ若輩者なので、応援よろしくお願いします!