雨と青空
17時、なんとか仕事を定時で終わらせて会社から出る。今日はあいつも仕事が休みだから、早く帰って二人でゆっくりドライブでもして海に行こうと話していたのに。なのに今、俺の頭にはぽつぽつと雨が降っている。学生の時から慣れてはいるが、俺は雨男だ。俺が楽しみにしている予定がある日は大抵大雨。あぁ結局今日のドライブも中止だななんてあいつに申し訳なく思いながらカバンを雨避けにして帰ろうと思っていた。
なのにその瞬間、目に映ったのはガードレールの前で傘を持つお前。お前がこっちに気がついて手を振る。
「もう!今日雨が降るって天気予報で見なかったの!?」
いつもよりラフな格好で俺に傘を差し出すお前の笑顔は太陽よりも輝いている。
「こんなんじゃドライブは中止だねー」
残念なはずなのに俺もお前もなんだか楽しそうで。それはきっとこの雨のおかげで近づけたから。
「コンビニでも寄っていく?」
そう尋ねるお前はきっとチョコアイスを買う気満々だ。
「あれ、晴れてきた!」
そう言って傘を畳む。そういえばこいつは学生の時から晴れを呼んでいたな。いつもは嬉しいはずの晴れが今日はなんだかものすごく寂しい。その理由は俺でも分かっているから、傘を閉じたその手を掴む。素直に「手を繋ごう」なんて言えない俺なのに、お前はまた太陽みたいに笑ってて、さっきよりも嬉しそうに見えた。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/8/2 9:27
いくら
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