僕は昨日恋人を殺した

冷たい雨が降りしきる暗い夜、街の喧騒から離れた一角で彼女と出会った。彼女の瞳は漆黒で暗い俺の瞳と違って明るく、希望に満ち溢れていた。彼女は国家の秘密を抱えるスパイ。僕は彼女を殺すためのアサシン。結ばれることは決してない。そう思っていたのに彼女と過ごす時間が増えるにつれ、僕の心は揺れ動いた。彼女は僕を愛おしそうな目で見つめた美しい瞳を揺らしながら 僕は組織に報告することも忘れ、気づけば彼女に夢中になっていた。最悪の状況を想像もしないで呑気に。ある晩のこと、彼女と街を歩いていたときだ。どこからか銃声が鳴り響いた。 目の前で鮮やかな血が散った。 「報告が無いと思えば、色目に騙され役目を放棄しているとはな」 彼女は撃たれた。僕のせいで、呑気にしているせいで。 アサシンなのに気配にも気づけずに、恋人なのに彼女も守れずに。 彼女は腹部に弾丸を撃ち込まれたのにも関わらず、 「ここままだと貴方も殺される」と彼女は僕の手を引いた。