春の星になりて

春の星になりて
春、雪解けの山のふもと 眠れる大地は 水を孕み 草の芽が まだ言葉を持たぬまま 空の匂ひを吸ひこみてゐた 誰もゐぬ野原に ひとすぢ 風が立ち そこにゐるはずのないものたちが 音もなく、通り過ぎてゆく
蘭陵
蘭陵