高尾へ
階段を半分ほど駆け降りた時、下品なおくびに似た音が聴こえた。
それから、扉の閉まる気配。
ホームに佇む私の横を、銀色の電車がゆっくりと速度をあげ、通り過ぎていった。
間に合わなかった。
高尾山口行の電車は、あと十五分待たなければ来ない。
たかだか十五分。でも、ゆったりと待ち構えるほどの心の余裕がなかった。
高尾山には、一度だけ登ったことがある。恋人が一緒だった。
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2021/8/21 10:07
斜月
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