別世界 今日は外の日です

 私は薄汚れた制服を着て電車へ乗る。周りの人も同じ制服を着ているが私のものはまだ色が鮮やかだ。国が国民健康政策を出してからというもの、成人は週に一日だけ野外労働をすることが義務付けられている。これには反対意見も多くこんなことを言っては同僚に恨まれるかもしれないが、正直私はこの政策に助けられている。というのも週に一度バリバリの肉体労働をしているにも関わらず私は少々肥満体型にあるからだ。この政策がない世界線を考えるとどれだけ恐ろしいことか……  そう考えているうちに電車は停止し、この車両の扉だけが開く。以前は全ての車両の扉が開いていたらしいが、汗と工場臭の混じった匂いに苦情が入り、通常車両とは完全にシャットアウトされた野外労働者専用車両ができたそうだ。だがそのせいで野外労働の日に間違って別の車両へ乗ってしまった時には、周りの視線に耐えながら一度現場を乗り過ごさなければならなくなった。  私は見知らぬ同僚と同時にホームを踏む。今日は珍しく雨が降っていない。同僚達の顔はみな下を向いている。太陽が眩しいのだろうか。私は雑に並んだ列の先頭に立ち前へ突き進む。
エーテル (短編・SS)
エーテル (短編・SS)
SF・別世界などちょっと独特な感じのショートショートをメインで書きます。 (全然別ジャンルも書くかも) いいね・コメント・フォロー気軽にしてください