眩暈

 眼前の真っ赤な絵画をいつまでも眺めていたいと思ってしまった。それは、背丈の倍ほどある大きさに圧倒されたからでも、極められた技量に衝撃を受けたからでもない。その絵画は、高く叫び、どこまでも行こうとしていた。  自室の隅に座り「西洋美術の簡単な歴史」という題の本をペラペラとめくり、適当なページを開く。文字は読まず、絵画の写真だけを見つめる。時には三十分見つめ、時には数秒だけ見つめる。今日は五秒で本を閉じた。  振動が机に伝わり、着信音を切った携帯が電話を知らせる。 「はい、もしもし」  着信画面の美香子の文字に目線を送る。 「あ、もしもーし」  少し落ち着いたトーンで美香子が応える。 「どうしたの」 「どうしたも何も、由香子最近アトリエに来てないと思ってさ。なんかあったの」
K
色々書いています。