第一章:第一話 亡霊の兵士

第一章:第一話 亡霊の兵士
 俺は死んだ筈だ。誰にも看取られず、掟に従い、自らの手で。頭がかち割れるような激痛で目を覚ます。  石畳の地面で四つん這いになり、周りは薄暗く、金属がぶつかり合う音と、嗅ぎなれた血と火の粉の香り。 「……?」  俺は今どこにいる? もう頭痛も無ければ、赤く染まっていたはずの手も綺麗さっぱり。俺は確かに死んだ。いや、死なないはずがない。奇跡的に生き残ってしまったのなら、もう一度死ぬだけだ。 「あれ……? 無い……」  片手で地面に落ちているであろう物を探す。俺が自ら死を決した道具。慌てて姿勢を直して周囲をさらに見渡す。何処にも見つからないどころか、俺はどこかの地下牢の廊下にいることがはっきりと分かった。
影白/Leiren Storathijs
影白/Leiren Storathijs
実は26歳社会人です。 基本ライトノベル書きます。 異世界ファンタジー専門です。 執筆歴は10年以上です。