タケウチは墓を立てる

 タケウチは膝から崩れ落ちた。  どうして地球が変わり果ててしまったのか、自分が冷凍睡眠されている間にどれ程の時間が経ったのか、到底理解が追い付かない。  ただ一つ、タケウチには分かったことがある。この施設にあるもの全てに既視感があること。スペースコロニー『タヌキ』で見たものばかりだということ。  次第に頭の中で当てはまるピース、それは『タヌキ』に乗ることが決まってから脊髄に埋め込まれた居住権チップの存在。元々は住人の生活と管理を簡便化する為のものだった。  過去の遺物は、それに反応しているという仮説がタケウチの中に浮かび上がる。  そして、過去の遺物と呼ばれる建造物は、明らかに文明崩壊への備えだ。  崩壊前に飛び立ったコロニーの住民たちに物資を託し、一人でも多くの地球人を宇宙に連れて行くためのものだとするならば、吟遊詩人が扉を開けられないこととも辻褄が合う。  『タヌキ』の為に用意されたのだから、当然だ。  『タヌキ』の住人全員が、救世主だったのだ。 「救世主は、僕じゃなくても良かったんじゃないのか……?」
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。 主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。 「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。 合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。