第2話:不可視の天秤(インビジブル・スケール)

【PM 15:30 都市セフィロト・第7居住区 中央公園】 昨日まで市民の憩いの場だった噴水広場は、いまや「概念の空白地帯」と化していた。 周囲には物理管理局(MA)の黄色い電子封鎖線(ポリス・ライン)が張られ、本来そこにあるはずの数トンの大理石像が、土台ごと消失している。 「……ひどいもんね。削り取られたっていうより、この空間の『質量という定義』だけが、綺麗にデリートされてるわ」 エリアが眼鏡のホログラム・ディスプレイを操作し、残留ノイズをスキャンする。 ナギは封鎖線を軽々と飛び越え、噴水があったはずの「空洞」に手を伸ばした。 「重くない……いや、ライトでもない。『手応え』がゼロなんだ。ここに何かがあったっていう記憶すら、空気が拒絶してるみたい」 ナギが指先にチャクラムを回転させ、微細な重心振動を周囲に放つ。 反響定位<エコー・ロケーション>の要領で「重さの残滓」を探ると、空間の歪みの底に、鈍く光る「銀色の小さな杭」が突き刺さっているのを見つけた。
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