涙をみせない彼女。

涙をみせない彼女。
 どんなに意地悪されても泣かない子がいた。  仲間はずれにされても上履きを隠されてもでたらめな噂を流されても。どんなことをされてもその子は決して泣かなかった。  わたしはそれをただ傍観してるだけ。一緒に無視するわけでもなく静かにその子を目で追っていた。  いじめっ子は平気な顔をしているのが気に入らなかったらしくて幼稚な行為がさらにエスカレートしていった。それでもやっぱりその子が泣くことはなかった。どうして泣かないんだろう。泣いて、男の子や先生に助けを求めればいいのに。そうしたら楽になれるのに。  朝、目覚めと共に日直だということを思い出したので急いで準備し走って学校に行った。不規則に乱れた息を整えるように膝に手をあてる。顔を上げると誰もいない教室でひとり黙々と机の落書きを消しているその子がいた。  口を開いてから言葉を発するのに数秒かかった。意を決して聞いてみる。
佳名汰
佳名汰
誰かの心を動かしてみたい。 佳名田→佳名汰