第10回N1 昼の空にある月

第10回N1 昼の空にある月
「『あ』はそなたのものにあらず」  幼き頃に、父から言われた言葉だ。父は縁側で優雅に扇子を顎に当てながら、遠くを見て呆けていた。  当時の私には、その真意が分からなかった。だって、『あ』は私を見てくれていたのだから。一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に転んでは立ち上がる。そんな幼少期を過ごしていた。  ところが、事態は変わっていった。私が十四の時、『あ』の婚姻が決まったのだ。相手は私ではない。私の父よりも位の高い、月城の姫君だ。  最近、懇意となった姫君――くれなと貝合わせをしていても、身が入らない。 「はなの、どうなさいました?」 「いえ、お気になさらず」  笑みを浮かべられない私の異変に気づいたのだろう。くれなは首を傾げる。 「ただ、焦がれた殿方が遠くに行ってしまいそうなのです」  私が視線を下げると、くれなは遠くを見る。まるで、あの時の父のように。
七宮叶歌
七宮叶歌
恋愛ファンタジーな連載と、ファンタジー、時々現代なSSを載せています。 フォロー、♡、感想頂けると凄く嬉しいです♩ 拠点にしていたNOVEL DAYSのサ終に伴い、ノベモア、solispia、caita、個人サイトに移転作業中です。 作業が終わるまで、なかなかNoveleeに投稿できないかと思います。 130万文字の移転頑張るぞ! NSS、NSSプチコン優勝者、合作企画関係の方のみフォローしています*ᵕᵕ お題配布につきましては、連載している『お題配布』の頁をご確認下さい。 小説の著作権は放棄しておりません。二次創作は歓迎ですが、掲載前に一言でもいいのでコメントください。 2025.1.23 start Xなどはこちらから↓ https://lit.link/nanamiyanohako お題でショートストーリーを競い合う『NSSコンテスト』第5回は2026.10.1開催予定です。 優勝者  第1回 ot 様  第2回 ot 様  第3回 除草機1号 様  第4回 黒鼠シラ 様 NSSプチコンテスト 優勝者  第1回 黒鼠シラ 様