第七十六話

苦しい表情を浮かべる男は、森に姿を隠していた。顔の下をお面と布で覆っており、目元しか顔が確認できない。 「次から次へと…。」 呟いた瞬間、近くの木々がササッとなる。才蔵が影から飛び出し、男に逆手持ちの忍者刀を振る。男はそれを躱し、何度かバク転した。すかさず才蔵は煙玉を炸裂させ、気配を消す。と、男が顔の前で指を二本立て、何やら術を使う。男のすぐ右から急に才蔵が飛び出してきた。が、男はそれを軽々避ける。また霧に消える才蔵。今度は真後ろから飛び出すも、指を二本立てた男が易々と避けた。次こそはと霧の中を駆け抜けた後、才蔵は男の右へ飛び出す。が、また避けられる。どうやら、術を使い才蔵の位置を探っているようだ。才蔵の姿を目視する前に才蔵の位置を認知し、避けているらしい。さすがの才蔵もなにか思ったのか、攻撃速度を上げる。しかし、それは才蔵の体力を減らし続ける選択となる。 「攻撃の種類これだけなの〜?ボク、もう攻略しちゃったよ〜?」 男は才蔵を煽る。それに煽られるような才蔵では無いのだが、ギリギリで避けてみたり欠伸をしたりするものなので、さすがに集中力が切れて来たようだ。才蔵の煙玉を使う攻撃は、霧のようになった一面を自由に動ける才蔵が圧倒的有利のため、誰にも破られないものだった。しかし、目の間にいる生意気な男が、それを打ち破ったのだ。
澄永 匂(すみながにおい)
澄永 匂(すみながにおい)
連載中の作品は、金、土曜日辺りに更新予定です。 大学生&素人なので文章がぎこちないですが温かく見守ってください。 中学生の頃に作っていた話(元漫画予定だったもの)を書けたらいいなと思い、始めました。