徒花
どうだって良かった。どうだって良かった筈なのに。紅い花の中で佇んでいるんだ。可笑しいだろう。嗤って。否、嘲笑ってくれ。頼む。紅が咲いているから。何も考えられない。ごめん。そう一言、言えればよかった。けれど。
「……なぁ」
言えないでいる。
「──起きてんだろ?」
紅い花を掬い取りながら、零す。だが、返事が来ることはない。分かっていた。分かっていたんだ。言うには遅すぎた。枯れ果てた花に水をあげても育たないって。唯、理解したくなかった。理解してしまえば、否が応でも現実を見なければならなくなるから。それでも。
『告ろ』。
確かに聞こえたその声に。大きく息を吸い、吐いた。風が凪いでゆく。どこかで光が爆ぜ、消えてゆくのを聞きながら。
「言いたい事があんだ」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/4/6 13:13
逢坂晴月
儚くて切なくて不穏な話が好きです。
誰かに届きますように。