徒花

どうだって良かった。どうだって良かった筈なのに。紅い花の中で佇んでいるんだ。可笑しいだろう。嗤って。否、嘲笑ってくれ。頼む。紅が咲いているから。何も考えられない。ごめん。そう一言、言えればよかった。けれど。 「……なぁ」 言えないでいる。 「──起きてんだろ?」 紅い花を掬い取りながら、零す。だが、返事が来ることはない。分かっていた。分かっていたんだ。言うには遅すぎた。枯れ果てた花に水をあげても育たないって。唯、理解したくなかった。理解してしまえば、否が応でも現実を見なければならなくなるから。それでも。 『告ろ』。 確かに聞こえたその声に。大きく息を吸い、吐いた。風が凪いでゆく。どこかで光が爆ぜ、消えてゆくのを聞きながら。 「言いたい事があんだ」
逢坂晴月
逢坂晴月
儚くて切なくて不穏な話が好きです。 誰かに届きますように。