それでも、ただ君に、

それでも、ただ君に、
 金木犀が香る頃、宛名のない手紙を書いていた。  元気で過ごしていますか。相変わらず泣き虫でしょうか。そんな言葉ばかり筆から零れる。  伝えたいことはなかった。  君はとっくに忘れているんだろ。  僕に勧めてくれた音楽も。 「忘れないでね」なんて言葉も。  それでも、ただ君に、またあの空を見せたかった。
夜ヶ咲
夜ヶ咲
ファインダーの向こう側、ずっと君を探している。/140字小説とその下書き https://mobile.twitter.com/yorugasaki