桜吹雪を君と 下

桜吹雪を君と 下
六[現在] 初めて奪われたのは小学生の頃だった。次に奪われたのは中学生の頃。奪還する事なく畳み掛けるように盗まれたのは高校生。 宝石を盗まれて、更にはショーケースも盗まれて、挙句の果てには警備員も盗まれたような感じ。少しおかしい気もするが。 どんなに逃げても彼女は追いついてくる。病室ではいつも普通普通と喚いていたが、彼女の能力は普通の域を超えている。何度だって盗んで、もうないはずなのに盗んで、幾度も盗んで。 盗賊なんだ。彼女は。 桜の季節になるといつも活動して、横顔で僕を脅して、両手を上げて降参する所を嘲笑って心を奪っていく。 整った目鼻立ちを持ちながらいつだって群れず、物憂げな瞳でどこか見つめている。
ot
ot
初めましての方、よろしければ仲良くしてくださいね