失くしたもの

失くしたもの
公園のイチョウが嫌いだった。 ベンチの隣に立つ一本のイチョウの木。 毎年実をつけ、この時期になると香るあの匂い。 子供の頃はよく靴を臭くして母に怒られたし、 始めてできた彼氏とベンチで二人、お尻で踏んでしまったこともあった。 いっそのこと切ってしまえばいいのに。 何度もそう思ったが、公園にはいつもあの木があった。 だが願いは突然叶ってしまった。 私が高校を卒業する年、この町で過ごす最後の秋に。 あのイチョウの木が無い公園は、
kent.kuroya
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Twitterで主に140文字小説を投稿しています。短編、長編も今後投稿できればと思っています。 Twitter: @KKuroya