失くしたもの
公園のイチョウが嫌いだった。
ベンチの隣に立つ一本のイチョウの木。
毎年実をつけ、この時期になると香るあの匂い。
子供の頃はよく靴を臭くして母に怒られたし、
始めてできた彼氏とベンチで二人、お尻で踏んでしまったこともあった。
いっそのこと切ってしまえばいいのに。
何度もそう思ったが、公園にはいつもあの木があった。
だが願いは突然叶ってしまった。
私が高校を卒業する年、この町で過ごす最後の秋に。
あのイチョウの木が無い公園は、
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2021/10/12 12:14
kent.kuroya
Twitterで主に140文字小説を投稿しています。短編、長編も今後投稿できればと思っています。
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