魔女狩りの笛

魔女狩りの笛
魔女狩りの笛が鳴った瞬間、腐肉を地で洗う死闘が始まった。時刻は草木も眠る丑三つ時。現代日本の時間に換算して午前3時ごろをさすが、ここは魔境だ。 といっても、21世紀の西洋先進文明からそれほど乖離してない世界線上にある。 グレーブヤード。カトリック教会のそばにある墓碑の列が荒波のようにうねり、土が盛り上がり、せりあがった墓石を虚空に弾き飛ばす。 一つ、また一つと小山から這い出てきたのは半ば白骨化した遺体だ。だらりと腕を垂らし、せむしの様に背中を曲げ、ガニ股でゆっくりと隊列を成す。 彼らは襤褸をまとい、身体の開口部から据えた瘴気を吐き、粘液を垂らしながら教会を目指す。 「ゾンビよ! ゾンビ来襲ーッ!」 不気味な異形の群れとは対照的にうら若き女声が彼らの頭上をよぎった。 箒にまたがり、長い髪とマントを風になびかせる少女―魔女だ。 おおよそ十騎あまりの|魔箒《ボウ》がゾンビたちの出現を警戒していた。一人の少女がはためくスカートをたくしあげ、下に履いていたブルマーのポケットから水晶玉を取り出した。 腐乱死体の襲撃は予測されていたらしく、伝令がすかさず司祭の耳に入る。
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