a piece of Tarte Tatin

   ●一話  屋上にそびえ立つ金網フェンスがモザイクとなり、地一依結(じいち いゆ)の解像度を壊す。  二月の吹き荒ぶ風を、彼女はフェンスを越えた先で一身に浴びていた。  背中まで落ちた白金の長い髪の毛を羽ばたかせて、黒いセーラー服のプリーツを大きく広げている。  病的に細い骨と、貧相に伸びた手足、艶のない蒼白く濁った肌を、冬の西日が突き刺した。  風が勢いよく屋上の扉を閉めた瞬間、忙しなくはためくエンジのスカーフが私の視界を彩る。 「なんだ貴様か」  安堵した声音で私を呼ぶ雑な人称は相変わらずだ。  私の返事など待たず、地一依結は数歩分もない足場から静かに背を投じる。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く」「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜 ※作品は全てフィクション ※無断転載、AI学習禁止