感情破損

昔から泣けなかった。 母が入院したとき姉も弟も「母さんが死んじゃう」と泣いていた。 父も、影でこっそり一人で泣いていた。それなのに 僕は病気で管に繋がれたままの哀れな母の姿を見ても 『死んじゃう』なんて思ったけど涙がでてこなかった。 母は何とか一命を取り留めたが、高校生になった春、 ずっと家族同然として飼っていた犬が突然死んだ。 高3だった姉も中2の弟も、母も父も子供のように泣いていた。 それでも僕は涙を流せなかった。涙を流せなかった僕を見て、 姉が「姉が心配してないの?最低」と言葉を吐いた。