【アナタは振り向いてくれない】

 どんなに頑張ってお洒落をしても、どんなに頑張ってダイエットをしても、どんなに頑張ってアナタにアピールをしても、アナタはいつも違う世界を見つめている。  私の知らない笑顔。私の知らない照れ顔。私の知らない声色。どうしてそれらは、私には向けられないの?  走っても走っても追いつかない背中。伸ばした手さえ届かない。抱きしめてもすり抜けていく。  私よりも可愛い子。小柄で細身の体型。誰にでも優しくて、少しふわふわしている。周りにお花が飛んだいそうな感じ。見ていると危なっかしいので、ついつい守ってあげたくなる。  アナタはそんな子の世界に行ってしまった。  私の方があの子より、アナタのことが好きなのに。どうして、なんで、私を見てくれないの?  大粒の涙がこぼれ落ちる。鼻の奥がツンっと痛いし、ずるずると溢れ出る鼻水。  心が、アナタを思うだけで、どんどん締め付けられ苦しくなる。 「こっちを振り向いてよっ‼︎」
時雨 天