【GL】爪先から片想い

 いつだって彼女の指先を彩る、鮮やかな色に目を奪われた。    たまたまゼミで知り合ったその子は、マニキュアを好む子だった。一度も染めたことがないという綺麗な黒髪とは対照的に、彼女の爪先は会うたびに違う色をしていた。先週のゼミの時にはワインレッドと黒の二色。週末に一緒に遊んだ時には紺色のワンピースに合わせてだろうか、スカイブルーだった。  そして今日。何気なしに視界に入れた彼女の爪には、何も塗られていなかった。 「あれ、ヒナちゃん今日ネイルしてないんだ。珍しいね」  手入れはしっかりしてあることがうかがえたが、それでも生来の桜色をしている彼女の指先というのはどうにもしっくりこない。どうしたのだろうか。爪を塗らない理由が、バイトの関係で禁止といったものしか浮かばない私は首を傾げた。彼女のバイト先がネイル禁止などといったルールがないことを、既に私は知っているからだ。  指摘された彼女は、爪先を大切そうに己の手の内に包み込むと口元を緩める。頬を赤く染めて、指先を撫でながら目元を細める。そうして彼女が見せてくれたのは、花が咲いたような笑顔だった。 「今ね、お料理を練習してるの」 「料理?」 「うん。彼氏がお弁当作ってほしいって言ったから。料理するのに、ネイルはちょっとまずいし、しばらく塗らないことにしたの」
故食
故食
恋愛ものメインでBL/GL/NLなんでも書きます。でも多分大体BL。気が向いた時にポンと置いていきます。普段はpixivとかで二次創作書いてます。