クロヲガチャガチャトカキマワシタノチムラサキ

 中央階段を上って南口を出た途端、俺はため息を溢した。  降り注ぐ雨のなか、ターミナル駅は多くの人で溢れている。  10月1日、午前11時。  年度半ばの月初だというのに、買ったばかりのルーズリーフに0.7mmの油性ボールペンで殴り書きされた気分だ。  雨という五線譜が世界に広がる。  雨粒が、行き交う人々の傘に弾けて音を鳴らした。  高くなったり低くなったり、音階という名の傘の群れは気疲れという鉛を心に乗せる。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く」「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜 ※無断転載、AI学習禁止