私の全てが気に食わない

私の全てが気に食わない。 元々大嫌いだった。 私と母を捨てて臭くなるくらいの香水を付けた新しい女の手を取って出ていった父によく似た自分が大嫌いだった。 ふわふわとしていて可愛らしいお姫様みたいな母と対象的な父譲りの見た目も、性格も、嫌いだったんだ。 母は私を大切な娘とよく言ってくれていたが、私はそれを嬉しいと思うと共に「お母さんに似ていれば良かったのに」と自己嫌悪した。 最低な父に似ている私が嫌い。 母の優しさを素直に受け取れない私が嫌い。 私の全てが気に食わない。
鏡森 翡翠
別アプリにてミステリ作家として活動していました。ミステリの他、倫理などをテーマに幅広いジャンルを描きます。