【お題】わたしのZXR

【お題】わたしのZXR
 筑波山の風返し峠に私はいた。愛車はカワサキカラー、緑のフルカウル4気筒ZXR250。これは母からもらったものだ。 「風になりたい」  高校一年生の夏休み、茨城のおばあちゃんちに夜行バスで関西から母と二人で帰省した私は、縁側に腰掛けて砂糖の入ったあまーい麦茶を飲みながら、冷たい井戸水を表面張力ができるほど入れたビニールプールで足を冷やしながら夏空を見上げた。両手で持っているコップの氷が、私と夏の熱でゆっくり溶けてカラカラと底に落ちてゆく。 「風になりたいならバイクの免許取ったら? おっきなバイク気持ちいいよ〜」  私の後ろで畳に寝そべって、ダルそうにうちわを扇いでいる母が言う。 「私が16歳の頃はね〜、彼氏とタンデムしたくてバイクの免許取ったんだよねぇ」 「んんん? お母さんが後ろに彼氏を乗せる? の?」  ちょっと頭が混乱した。 「そうだよ〜。彼氏乗っけて風返し峠行ったり大洗海岸行ったり。海は楽しかったなぁ」
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
小説を書く練習をしています。拙い小説なので、合わないと思ったらブロック推奨です。 読んで下さった皆様に感謝します!