最期の小包
悲しいとか寂しいとか、感情がまるで無くなってしまったかのように何も感じない。
いつものように学校に行けば整った顔立ちをクチャクチャに崩した笑顔で友人達と会話している彼女がいる。そうとしか思えない。いや、そう思いたいから彼女の死を認めていないのかもしれない。
葬儀に参列しても、彼女の遺影を見ても、彼女の母に「ありがとう」と言われても何とも思わないし何も感じない。というより何かを思ったり感じてしまうと彼女がもうここにいないことを認めてしまうことになるような気がして必死に強がっていた。
人間の生涯なんてあっけなく終わってしまうものなのだと思い知らされた。格闘家のアンディ・フグと同じ病が彼女がこれまで紡いできた「人生」という物語をほんの一瞬で強引に完結させてしまった。
彼女の人生の最期を彼氏という立場で彼女の家族と一緒に見送らせてもらえた。「最期は自宅で」という彼女と彼女の両親の希望は叶えられず病室で彼女は息をひきとった。
黄色い包装紙で丁寧にラッピングされた箱が宅配便で届いたのは彼女が息を引きとる前日の夜だった。送り主は彼女だが、伝票の字は彼女のものではない。恐らく彼女の母が代筆したのであろう。もう文字を書く力すら残っていないのだろうかと思うとその時は流石に号泣した。彼女はもう文字すら書けないのに自分はこんなに号泣できてる。この現実すら憎たらしくて、そう思えば思うほど涙が出た。
彼女からの贈り物を開けたのはそれから2時間たっぷり泣いたあとだった。敷き詰められた緩衝材の上に薄い水色の封筒が入っていた。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2023/2/18 10:27
最終編集日時: 2023/2/19 3:35
ハヤト