母は、私のことが嫌いなのだろう。一つ歳上の兄には、決して見せない表情を、私には容赦なく見せつけてくる。 そう、それは、怒りや苛立ちの表情だ。 母が、兄を叱っているところなど、見たことがない。私においては、どんな些細な事であっても、睨みつけ、何度も何度も、同じような言葉を投げてくる。兄にはまったく見せたりはしない、あの、鬼のような形相で。 そのようなわけで、私は大学を卒業後すぐに家を出て、一人暮らしを始めた。 兄は、現在も両親と共に暮らしている。 しかし、この三人から度々、呼び出されていた。 やれ、病院、市役所、金融機関、ありとあらゆる事で、だ。いつぞやは、兄が旅行先で怪我をした際に、迎えに行くのと同時に、地元の病院へ連れて行ってほしいと頼まれた。仕事があるので断ったのだけど、
ひぐらし
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似非物書き