昼想夜夢

昼想夜夢
 今日が最後の登校日。足取りは軽いようで重い。この日が終われば、東京に旅立つ。慣れてしまった教室の窓際に近い席も、今日でもうおさらば。その時、登校してきた彼が目に飛び込む。いつもどおりの、少し周りとは一歩引いたオーラを纏って。そして、誰かの元まで足を運んで話しかけることも無く、すたすたと私の隣の窓際の席に着いていた。その時に鼻をかすめる柔らかい匂いがまた、私を虜にする。  そんな彼と不意に見つめあう。彼はすぐに目を逸らして、窓の向こうを見つめていた。私も、窓から吹き抜ける風を浴びる事を口実に彼の横顔を見つめていた。私に視線を向けない彼が、ずっと……気になっていて。いつの間にか彼を黙って追いかけていた。  おはよう、と言えば、少し間をおいてから、おはよう、と彼は、返した。今度は姿勢を変えて、机に突っ伏して彼を見つめる。 「もう卒業式だよ。この前まで、受験始まったばっかりなのにね」  と言えば、彼はただ呟いた。 「早いね」  また沈黙が流れる。眺めるだけでも飽きないけど、話したい。でもきっと、話しすぎる女の子は、彼は嫌うと思って。私は彼から視線を逸らして、何にも書かれていないのに、前の席の背もたれをじっと見つめる。  その時、友人が教室の入り口で呼ぶ声が聞こえて。私は、友人の元へ駆け寄った。他愛のない話が、私の退屈を埋める。私は、友人と握手して 「絶対、一緒に遊ぼう! 東京にも遊びに来てよ!」  友人は、首が取れそうなほど頷いて、熱い抱擁を交わす。
山芋とろろ
山芋とろろ
短編作者。恋愛物を書きます。 私の作品が皆様の癒しになりますように。 投稿頻度少なめ