一行ずつ

放課後の教室は、すっかり静かになっていた。 僕は一人机に向かい、ノートの上を鉛筆がすべる音だけが、小さく響いている。 問題を解いているというより、ただ文字の上をなぞっているような感覚だった。 ふと、窓の外に視線が向く。 校庭の端で、彼女が笑っていた。 隣には彼がいて、二人はゆっくり歩きながら話している。 声は届かない。それでも、楽しそうだということだけは分かった。
寸志
寸志
はじめまして 恋愛小説を書くことが多いです。