お題で習作《日常編》  ダイエット

(どうして……。どうしてこんなことになったのだろう……)  私は握った手のひらに力を込めて、呆然とその容赦のない四角い悪魔と対峙していた。  祈るように過ごしたこの数日間のことを思い出して、私はぶるりと身震いをする。予感は当たってしまった。全て、悪い方へ。 「ぜんぶ、鞍馬さんのせいだ……。あの時、鞍馬さんが無理矢理に……」  その私の目に仄暗い絶望と一方的な怨嗟の念が宿る。  そうだ。全部あの人が悪いのだ。  あの人が話題のスイーツビュッフェのタダ券なんか貰ってこなければ、あの人が一人じゃ恥ずかしいから一緒に行ってくれなんて私に頼み込んで来なければ、私の……私の体重は……!  解ってる。鞍馬さんには非はない。だけど、この気持ちと増えてしまった体重は、誰かのせいにしないと心が折れてしまいそうだった。
小野セージ
小野セージ
ちなみにセージは男性名ではなくハーブの名前のほうです。修行のためにお題を使った短編を不定期に投稿してみようかなと。登場人物はいつものうちの子です。