桜が咲かない春(6)

桜が咲かない春(6)
体育教官室に2人で向かう。 早くしないと、人がどんどん集まってきてしまう。そうしたら、入部届けが提出できるのが部活開始時刻になってしまう。入部届けを出して、今日から部活に参加したい俺たちは、なんとか部活開始時刻は間に合わせなければと体育教官室へ走っていた。「やべぇ!数プリ忘れた!!」 体育教官室に向かう途中の渡り廊下で、夕聖が言い出した。数プリは数Aの授業で今日出された課題プリントの事だ。 「明日提出じゃねぇからいいだろ!」次の授業明後日だぞと言いながら、先に走っていた夕聖に追いついた。 「ここじゃね?体育教官室」そう言いながら、ゆうせいが体育館前のドアを指さす。そこには、マッキーの太い方で、おそらく体育教官室と書かれた紙が貼られたドアがあった。恐らくというのは、字が汚い為汲み取って読んだからだ。それにしても、誰が書いたんだよこの字。「いくぞ」夕聖と俺はリュックを下ろしてドアの前の壁にもたれさせるように端に並べ、手に入部届けを持ってドアをノックした。 「失礼します。1年A組の湯浅夕聖でふ、」勢いよく言ったせいだろうか。夕聖は思いっきり噛んだ。俺は少し笑いそうになるのを堪えて、「1年A組の山田桜です。成田先生はいらっしゃいますか?」 そう言うと、若くて色黒な女の先生が「成田先生?今はいないかもー」と返してきた。間に合わなかったか、2人で残念に思っていると「どーした僕に用事かい?」後ろからメガネで細い先生に声をかけられた。「あ!成田先生!」よかった。まだ部活は始まってない。2人とも心の中でガッツポーズをした。 「俺たち入部届け出しに来ました1年A組の湯浅夕聖です。」 「1年A組の山田桜です。今日から自分たちも練習に参加したいのですが、」 お願いします!と二人で入部届けを出しながら頭を下げた。「いいけど…」そういう成田先生は少し笑っていた。
にこ
にこ
『桜が咲かない春』 自分のペースで少しずつ書いていきます。何度も消したり書き直したりしていくと思います。