遺書について
これを読んでいるということは、きっともう私は死んでしまったのでしょう。万が一の為にと、この手紙を書いています。
私が遺すものといっても、ひとりが生活するのに必要な家具家電一式と、少しの貯金ばかりでしょう。遺産なんて大仰なものを遺すほど長く生きている訳でもないので、残念ながら貴方の財産にはならないでしょうね。
ならば何故私がこんなものを書いているのか。実は貴方に、いくつかお願いがあるのです。難しいことではありません。できたらで構わないから、お願いしたいのです。
ひとつめ。私の葬儀について。
私の死は、まず親戚にのみ伝えてください。葬儀は手短に。骨は海に撒いてくれると嬉しいです。そのくらいの貯金は残していくと思います。
ふたつめ。私の友人について。
友人達の多くは、私の死を乗り越えることなど容易いことだろうと思うのですが、唯一特別な友人がいます。彼女は私の友であり、好敵手であり、恋人であった人です。彼女に、同封したもう一通の手紙を渡してほしいのです。彼女への思いと、秘密と、願いが書いてあります。彼女が受け取らない時は、燃やしてしまってください。ただし、中は見ないこと。
みっつめ。これが最後。
私は、本当に幸せだったと、私を愛してくれた人達に伝えてほしい。彼らに会えて幸せだったと。もちろんその中には貴方も含まれています。本当はもっと、たくさんのことをする予定だったけれど、それも叶いそうにないので、私の代わりに皆がやりたいことを、好きなようにやってほしいと願っていると伝えてください。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2021/9/29 13:53
白本竜也
短編を書いてます。
Twitterでは140字小説を主に色々と。
よろしくお願いいたします。
Twitter: @shiramoto_140