1.はじまりの冬
「お客さん、今晩はやけに冷えますね」
その車掌の猫は、名前をウィリーといい、茶虎の雄猫だった。
「このごろは、まるで冬の舞台のなかで雪が揚々と舞いおどっているみたいですよ」
ウィリーはそう言って、小さな両手で中くらいの大きさの円いハンドルを右方向に回した。車体が右手に旋回して目の先の道を進んでいく。
ウィリーが運転するこのヴェルベット号なる車両は、まるで路面電車のようなつくりで出来ており、一向を暗闇に包まれる不思議な世界をまさに走行していた。
「………」
運転席の真後ろの後部座席に座る男は、ウィリーの言葉に返事をすることなく、ぶっきらぼうな気難しい表情(かお)つきをうかべて、車窓の外を眺めていた。彼は名前をランドラといい、二十七歳の人間で、地味な服装を身につけていた。
「今年は、いちだんと強い寒波の流れる季節になるそうですよ」
ウィリーは相変わらず、ランドラの断固たる無口の壁に気を落とすことなく、和やかな口調で彼に語りかけた。ランドラはしかし彼も相変わらずにそんな気軽な"運転手"を他所に、やはり何も答えることはなく、ただじっとかの通りに窓外に映るどこか幻想的とも云える夜空を見つめて眉ひとつ動かさないのだった。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/12/28 17:46
最終編集日時: 2026/1/10 4:19
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
アベノケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)