桜が咲かない春
「おはよう!なぁネクタイさ、こっちとこっちどっちがええと思う?花ちゃんはこっちのピンク派らしいんやけど、、」もう髪型まで完璧にセットし終えていた父は、うすいピンクのネクタイとうすい青色のネクタイを持って、リビングで朝ごはんを食べていた俺に、楽しそうに聞いてきた。「別にどっちでも。てか本人より気合い入れるのやめてくんない?」口に入っていたご飯を飲み込んでから、俺は呆れながら父に言った。「何言うてんねん。大事な息子の入学式やぞ?ここで入れんといつ入れるんっちゅー話や。あかん俺が緊張してきた。」父はそう言いながら結局母が選んだ方のうすいピンク色のネクタイを結び、最終確認をするためか、洗面所へ戻って行った。「…ごちそうさまでした」朝ごはんを食べ終え、俺も制服に着替える。中学も学ランだったからあんまり変わらないけど、首元の校章を高校のものに付けかえるだけで、なんだか新しい制服な感じで新鮮だった。4月10日今日は俺の高校の入学式だ。
7時10分父と母と3人で家を出て、学校へ向かう。
バスに乗り、電車に乗り、駅から5分歩くと春校に着く。「やっぱり1時間てちょっと遠いね、大丈夫?」「母、俺高校生だよ?学校説明会だって一緒に行ったじゃん。大丈夫。」うちの母は少し過保護なところがある。俺はほっといてと、迷惑顔でそう言った。「せやな、歩くのは最初のバス停までの道5分と、駅から学校までの5分やし、こいつ体力ある方やん。もっと距離あっても良かった気するで俺。花ちゃんは優しすぎるねんなー」父は俺の冷ためな言葉のあと、その場を和ますためか、明るくそう言った。うちの家は両親がとにかく仲がいい。父が20歳、母が19歳の時に結婚し、2年後に兄がその3年後に俺が生まれた。だから次男の俺と同年代の子供がいる親の中で、歳をとってる方ではない。でも、もういい歳だろ。頼むから公共の場で名前ちゃん付けで呼び会うのやめてくれ。頼むから手を握って学校行こうとするのやめてくれ。恥ずかしすぎて死ねる。なんて小学校高学年から何回も言ってきたが無理だったので、諦めて少し2人から距離をとる。
春光ヶ丘高校(しゅんこうがおか)略して春校(しゅんこう)今日から俺が通うこの高校は、偏差値72でサッカー部が関東大会に出場している。
それ以外にも吹奏楽部、テニス部、女子バスケットボール部が結構強いらしい。
中学の入学式は、小学校が合併するから知ってる人が半分いたけど、今回は俺の中学から行くのは俺と、全然関わったことない女子1人だけ。
学校に着き、期待と不安で一杯な俺を満開の桜が迎え入れた。
0
閲覧数: 31
文字数: 1419
カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/3/12 13:08
最終編集日時: 2023/3/26 1:49
にこ
『桜が咲かない春』
自分のペースで少しずつ書いていきます。何度も消したり書き直したりしていくと思います。