【欟乃華】秋の聲

【欟乃華】秋の聲
 嫌な事から全て、逃げ続ける私。あらゆる事に立ち向かわない私。  窓の外は、紅葉の景色が広がっていた。涼しい秋風が髪をふわりと揺らす中、衣替えしたばかりの長袖のセーラー服がまだ着慣れない。  私には、腹違いの年の離れた兄がいる。私が生まれる前に兄の実母は病死していて、父は私の母と再婚したらしい。私は何不自由なく、この家で育った。兄の自室の扉を数回ノックする。私は内心、いつもこの数秒間、意味もなく緊張してしまう。 「誰?」  いつだって、兄は穏やかで他者を安心させる声音で人と関わろうとする。人間不信なのに。いや、人間不信だからこそ、その笑顔を絶やさない。 「刹那です。お見舞いに来ました。終夜兄さん」 「どうぞ」 「……昨日、倒れたと聞きました」  扉を開けた後、兄はベッドの上に座っていた。ベッド周りに原稿用紙の切れ端と万年筆が転がっていて、倒れても仕事をする生真面目な兄に、むっとした。私と目が合うなり、にこりと微笑む兄は、いつも通りだ。 「今は大丈夫。問題ないよ。いつもの事だ。心臓が弱いというのは難儀だよねえ。……ねえ、僕の代わりに朝ごはんを食べてくれない?」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2026/9/17 16:43
最終編集日時: 2026/9/17 18:32
梟文庫
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