第三章 「2人の差」

第三章 「2人の差」
それ以来私は人間不信を起こし、しばらく好きな人ができなかった。もとから恋愛体質だった私にとって、好きな人のいない日々は輝きを失っており、ただただ退屈だった。 そんな日々を送り、私は中学校に入学した。少しでも学校生活を楽しく送るために、好きな音楽を活かせる吹奏楽部に入部した。3年生1人、2年生4人の小さな部活だった。1年生は私を含めて5人だった。ある日の部活で、楽器体験が行われた。3年間付き合っていく楽器を決めるのだ。私は直感で、フルートが楽しそうだと思った。小さくて可愛らしい見た目、小鳥のさえずりのような音色。吹いてみたいと思った。フルート体験のブースに行くと驚いた。そこにいた先輩を、私は知っていた。近所に住む孝之という人だった。お互いが目を見開き、長い沈黙が続いた。私は、 「お久しぶりです!!近所に住んでいます広瀬結愛です!」 と言った。すると先輩は、 「知ってるに決まってるじゃん、孝之です。」 と爽やかな笑顔を浮かべて言ってくれた。その瞬間私は、恋に落ちてしまった。あぁ、何年ぶりだろう、こんな純粋な笑顔と純粋な恋心。私は絶対にフルートパートに入ろうと決めた。 その決心の通り、私はフルートパートに入った。一緒に練習したり、アドバイスをもらったり、本当に楽しかった。 それから1年ほど経ったある日、私は先輩たちと恋バナをした。孝之先輩はいなかった。だから私は私の好きな人を打ち明けた。すると先輩はみんな応援してくれた。その時先輩が引退するまで残り2ヶ月を切っていた。先輩たちは引退までに告白させようと言ってくれた。わたしも頑張ろうと思えた。すると恋バナが盛り上がってきたところで、突然大きく低い音がした。私たちはバスドラムだと思ったが、外を見るとどうやら雷だった。すぐに放送で直ちに下校するよう指示され、恋バナは打ち切られた。 1ヶ月後、私は衝撃的な場面に遭遇してしまう。私は孝之先輩とトランペットパートの由紀先輩が一緒に帰っているところを見てしまった。しかも2人は手を繋いでいた。どう見ても付き合っている。いつから2人は付き合っていたんだ。どうして1ヶ月前、由紀先輩は何も教えてくれなかったんだ。2人が付き合っているという事実と先輩たちに優しいようで残酷な嘘をつかれていたというまるであの日の雷のような大きな衝撃は、私の心をぶち壊した。
ピルビン酸
ピルビン酸
女子高生です。 実体験を交えて恋愛小説を書けたらと思っています。 温かい目で見てくれると嬉しいです。