ノスタルジアの日記(2ページ目)
あれから随分と日が経ち、一ヶ月。ついにこの日が来た。今日に至るまで、私の食欲は少しずつ落ちて、今なんて朝から何も口にしていない。それは、クロの事を想えば想うほどに悪化した。彼の不安に比べれば、彼の境遇に比べれば、私の今の暮らしなんて、寂しさなんて、擦り傷程度に過ぎない。そう思う度に、自分の暮らしの有り難さに気づき、そして同時に憎らしくもなる。私は、彼が当たり前のような暮らしをできないでいるのに、のうのうと食事を摂り、明日を迎える事を当たり前と感じている。それで良いのか。そんなの、贅沢だろう。彼が苦しんでいる時に、自分だけ明日を信じて良いのだろうか。否、自分だけ贅沢はできない。そういう自責の念が、私の食欲を下げたのだ。
特に、今日はクロの“再起動”の日とあって、朝からこの日記をつけようという分の、僅かな気力以外何も湧かなかった。一旦、ここまで書いて、私は彼の元へ向かった。
いつも通りの鉄格子。変わらぬ色と高さの揃った芝生。その上には、いつもと同じボロいネグリジェを纏った、いつも通りの艶やかな黒髪を靡かせたクロが立っていた。いつもみたいに、物憂げに鉄格子をなぞりながら。
それを見て、私はいつもと変わらぬ彼の姿に、微かな希望を抱いた。抱いて、しまった。
「クロ!今日はね、今日は新しい遊びを思いついたのよ!」
「…。あの、人違いでは?」
そう言って、クロは首を傾げた。わたしは心の底で“やめて、それ以上言わないで”と叫んだ。嘘であってほしい。そう願い、そうならなさそうな彼の反応に、焦りを抱いた。
「っ⁉︎ クロ!私よ!ノスタルジア!」
「誰ですか?私は、クロじゃなくてNo.0ですよ。やっぱり人違いなんじゃ…。」
「人違いなんかじゃないわ!貴方は、そんなつまらない名前じゃない。クロなのよ!」
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/6/28 16:39
あいびぃ
初めまして、あいびぃです!
見つけてくれてありがとう♪
私自身、生粋のアニオタ・漫画オタなのでファンタジーが多めになってます…多分。
詳しいことは「自己紹介」にて!
まだまだ若輩者なので、応援よろしくお願いします!
※❤︎&コメはめちゃくちゃ喜びますので、私を喜ばせたい方は是非!
私の事が嫌いな方はオススメしません。