贈り物

 新月の夜、風の音すら聞こえぬ墓地に男が一人。男の体は薄汚れており、髭に隠れた顔は闇夜でよく見えない。長袖のシャツは捲られ、腕には厚い毛が生えていた。  男の手には大きなスコップがあり、全身を使ってスコップを振っている。地面の土が掘り返され、土中の独特な匂いが広がった。男はその匂いを振り払うように地面を掘る。  男の手が止まり、スコップが何かにぶつかった音がした。男はスコップを投げ捨て、穴の中へ上半身を突っ込む。手で細かな土を穴の外へ飛ばす。  男が頭を穴に沈めてから少しの時が経ち、ようやく男は顔を上げた。男の手には輝かしい指輪があった。月のない夜、星の光を受け、指輪が小さく光る。男はスコップと指輪を手にどこかへ消えてしまった。  暖かな灯りが広がる室内で、十人前後の人々が談笑を重ねている。大人たちは皆笑みを浮かべ、老人を中心に盛り上がっている。食事を早々に終え、広々とした室内を歩き回り、皆が久々の再会に心を躍らせていた。  暖炉の脇で小さな木車の玩具を持った少年がしきりに窓の外を気にしていた。両親は親戚との交流を続け、少年には気がつかない。  椅子に足掛け、少年は外の景色を見ることになったが、外は暗くほとんど何も見えなかった。額を窓に当て、その冷たさを味わう。頬が潰れるほど押し付けたその視線の先に大地を掘る人影を少年は確かに見ていた。  翌日になって老人は薄い皮膚に血管を浮かべ、顔を赤くして叫ぶ。愛する妻の墓を荒らされ、永遠を誓った指輪を盗まれ、昨晩の祝宴の喜びを一瞬にして無くしてしまった。人々は老人を憐れみ、老人と同じように墓荒らしへの怒りを口にする。  少年は昨晩見た人影を思い出していたが、雰囲気の重い空間で、口を開くことはなかった。 
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色々書いています。