山の恵みを感じていたかった

 美味しい実を実らせる木が沢山沢山その山にはありました。 木々の根元には食べてはならないものもあるけれど美味しいキノコも生える場所がありました。  人が近づかない森の中、ゆったりとした時間が過ごせるその場所に私達は家を建て、切った木々の数だけ花や木を植えてきた。  しかし、静かな時間を過ごせたのは本当に束の間だった。 ガタガタガタガタ!ウィーーーン!がっしゃん!  静かだった森の中に響く機械音。 私達の家の真向かいの土地が買われて、その土地を買った人が木々を伐採していきます。  美味しい実を実らせる木々も、キノコも彼等にとって邪魔なものでしかないのでしょう。みるみる内に更地になっていきました。  1ヶ月も経つと真向かいの土地は綺麗さっぱり何も無くなってしまって、私は悲しみを覚えました。 美味しい実を実らせる木々が生える真向かいの土地に良く小鳥や獣達がやってきて憩う姿を観察できたというのに、これではもう彼等の姿を観察する事なんて出来ません。
ナナシ
今日も静かに生きてます。 prologue様にも出没し、極々たまに小説を投稿してます。