筆先に咲く
桜の木漏れ日に煌めく艶やかな髪が、肩まで優美に流れ落ち、まるで絹のように輝いている。黒を基調とした袴には桜色の花弁模様が施されて、その品格が際立っていた。満開の桜木の下で静かに腰を下ろす姿は、もはや一幅の絵画。僕は息を呑みながら、言葉をかけた。
「好きだ…!」
とても美しかったんだ。口が裂けようが自身の妻子に言えたもんじゃない。筆を握ってキャンバスに収めきる前に、僕の視界が絢爛な色彩に描かれた。
「知ってる。」
彼は見透かすように顔を陽に向けて笑みを浮かべた。その鋭利な横顔も、なんと妖艶なことか。僕はどうにかなりそうだ。
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カテゴリー: 詩・短歌
投稿日時: 2024/10/21 12:45
最終編集日時: 2024/12/20 15:04
タフィー_1006
短編、物語の一欠片を書いています