筆先に咲く

筆先に咲く
桜の木漏れ日に煌めく艶やかな髪が、肩まで優美に流れ落ち、まるで絹のように輝いている。黒を基調とした袴には桜色の花弁模様が施されて、その品格が際立っていた。満開の桜木の下で静かに腰を下ろす姿は、もはや一幅の絵画。僕は息を呑みながら、言葉をかけた。 「好きだ…!」 とても美しかったんだ。口が裂けようが自身の妻子に言えたもんじゃない。筆を握ってキャンバスに収めきる前に、僕の視界が絢爛な色彩に描かれた。 「知ってる。」 彼は見透かすように顔を陽に向けて笑みを浮かべた。その鋭利な横顔も、なんと妖艶なことか。僕はどうにかなりそうだ。
タフィー_1006
タフィー_1006
短編、物語の一欠片を書いています