夕暮れに染まる頃

 夕暮れ時と呼ぶにはまだ少し早い、それでいて空は茜色に染まり始める時間帯。砂埃舞う小学校の校庭で二人の児童が座りながら空を眺めている。少女は丁寧に足を折りたたみ体育座りを、少年は胡座を。  ちょうど人一人分を空けた二人の間に会話はなく、風が細やかな音を届ける。周囲に児童は誰もおらず、果てしない校庭が一つの世界に思える。  切ったばかりの短すぎる髪の毛を触りながら少年の頬は空色に染まる。それと同じ色をした髪留めを少女もまた触っている。右手を頭に、偶然にも似たような仕草の二人は目を綻ばせた。  そのまま少年が後ろに倒れ、仰向けになる。少女もまた仰向けに。両手を広げた二人の手先がぶつかり、その不規則に触れ合う手にくすぐられる。また、頬を緩ませる。  空がいよいよ赤に染まり切った頃、夕暮れ時を告げる鐘の音が二人を立ち上がらせる。何度か顔を合わせ、砂埃と共に二人は背を向ける。  互いに静かに歩き出す。その歩幅は小さく、距離が開くのには随分と時間がかかった。少女が長い三つ編みを揺らしながら振り向くと、少年の白の半袖服が砂まみれになっている。少年の手には少し空気の抜けたサッカーボールがあった。  少年がボールを少女の足元へ転がすと、少女は腰を屈めて両手で拾い上げる。少年は足を揺らし、ボールを蹴るフリをしている。少女は手に持ったボールを丁寧に地面に置き前へ蹴り出す。  蹴り出されたボールはめちゃくちゃな方向へ転がっていった。少年は少し表情を不敵に緩めながら、グラウンドを強く踏みしめ、そのボールを追いかける。ギリギリ追いついた少年は不恰好にボールを足下に収めた。  少年もまたボールを蹴り出そうとした時、車の音が二人の耳を突く。車の窓から右腕を大胆に乗り出した髭面の男が少女の名を呼んでいる。男は柔らかく少女を見つめている。少年は少し顔を歪めながら男を見つめたのちに深々と頭を下げた。  少女も少し眉を下げ、ゆっくりと歩きながら車へと向かう。校庭のすぐ脇に停められた車の後部座席のドアに手をかけ、少しだけ振り返る。小さく手を振る少女に対し、少年は高々と手を挙げ大きく振る。髭面の男は欠伸をしている。
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