昭和59年だっただろう。親が夜逃げした。  小さな建設会社を営む家だった。 まー、どこにでもある話だろう。         ランドセルを担ぎ、家の玄関に入ると、まー、強面のおじさん方達が土足で、私の家に上がり込んでた。 今思うと 、しゃーない、しゃーない、としか、言いようがない。 なぜなら、両親は3億もの負債を残し、逃げたのだから。        1カ月もの間、父のお母さんの住む市営住宅で生活した。カビたバターを焼いたパンに塗った記憶しかない。   程なく、深夜、ランドセルだけ持って、姉と私2人、親戚のおじさんの運転するワンボックス車で、富山から、旅立ったのだ。   延々と暗い夜道、峠を越え、そこに着いたのは朝か昼か覚えていない。       覚えているのは、3つ下の弟と抱擁したくらいだ。 
bake