eighth

「満月の次の日はお休みなんです」  ベランダ越しに、三角錐のカクテルグラスを載せたオクトさんの手が見える。月光を透かした琥珀色のアメールピコンと、氷が、くるくると渦を巻いては、掌に不思議な模様を躍らせた。 「変わった規則でしょう?」 グリーンカーテンの間から身を乗り出して、彼女が顔を覗かせた。 「実は、うちの社長が狼男なんです」  鳶色の癖毛がふわりと風に揺れる。同じ色の瞳が、黒縁眼鏡の奥で悪戯っぽく細められた。 「狼男?」 「そう。普段は堅物ですけど、満月の日だけ羽目を外すんですって。それで、定時退社、翌日休み。おまけに気風もよくなって、こうしてお酒もくれたりするんですよ」 「羽目を外すって……一体何をするんです?」
絵空こそら
絵空こそら
よろしくお願いします。