揺らぎ

揺らぎ
 暑い日が続いている。由実が死んだのもちょうどこの時期だった。その日は窓に当たる雨がバチバチと響くほどの雨音と、むせ返るような湿気が身体にまとわりつくのが印象的な日だった。由実は心配する僕をよそに、まるで何も気にしていないかのような無邪気な笑顔で『行ってくるね!』といつもと変わらない声で言い残し玄関を飛び出して行った。その後ろ姿が今も鮮明に脳裏に焼きついている。まさかそれが最後の姿になるとは夢にも思っていなかった。  由実との出会いは知人の紹介だった。由実がショートカットの髪を耳にかける瞬間、僕の心は跳ね上がった。恥ずかしそうに笑いながら自己紹介する由実に対し、僕は動揺を隠すのに必死だった。一瞬で心奪われたことを悟られないよう、僕は意識的に無愛想なふりをしたが、内心では彼女にもっと近づきたいという気持ちで心臓の鼓動が早くなった。  季節が変わっても、僕の心はまだあの日から止まってる気がしていた。由実の死から数年経ち周りは徐々にそれぞれの生活に戻っていったが、僕だけは過去に囚われたままだった。特に雨の降る夜は彼女の笑顔や声が脳裏をよぎり眠れない日々が続いていた。  ある日、悠斗が連絡をしてきた。最近、昔の友人で集まりたいという話が上がっているという。僕は誘いを断ろうと思っていた。ずっと避けていた友人に会うのが気まずいというのもあるが、彼らに会う事で過去がより一層自分を苦しめる気がしていた。  しかし、何かが変わらなければいけない。そう思った僕は意を決して集まりに参加することにした。
テツヤ
初心者🔰です。拙い文章かと思いますが読んで頂けたら嬉しいです。