調べもの

調べもの
わたしには、命と同じ価値を持つ「お守り」がある。それは、わたしが生きていく上で、酸素と同じくらい絶対に欠かせないものだ。 わたしの朝は、まず、いつものカフェから始まる。そこは、今日一日をどう生きるか計画を立てたり、調べ物や、とめどなく溢れる思考をノートに書き出すための、大切な戦場だ。この時間だけは、どんな理由があっても削れない。金がなくても、この一杯のために惜しむことはない。 いつも通り「アイスコーヒー」を頼む。 カウンターの店員は、またしてもわたしをバカにしたような表情で接客してくる。わたしは、それに全力のバカにしたような笑顔で応じる。手と足の汗が止めどなく湧き出るが、すぐにお守りに願いを込めると、ぴたりと止まる。 いつもの席に、冷たいアイスコーヒーを置く。一口飲んだ後、すぐさま席を立ち、店の奥の喫煙所へ。ハイライトのメンソールを一服。席に戻り、アイスコーヒーをもう一口。またすぐに立ち上がり、トイレへ。こうして、わたしの長い一日が、ようやく始まるのだ。 三十分ほど経ち、カフェインのせいで心臓が暴れ始める。お守りに願いを込め、身体が正常に戻るのを待つ。 「無理しなくていいんだよ、風人は頑張りすぎなんだから」 隣の席の、お姉ちゃんが心配そうに言う。彼女はいつも、わたしの左斜め前に座っている。 「そうだよ。考え事もいいけど、今日はゆっくりしたらどうだ?」 テーブルを挟んで向かい側、少し乱暴な口調のお兄ちゃんが、穏やかな表情で提案する。
Kazato
Kazato
曲作ったり書いたり弾いたりしてる人