花火が上がった。
綺麗な夜とは星が見えそれを指で繋げて夏の大三角が作れる、月は満月に近い真丸の形をして白い光を放っている。その静かな空の下を私と君の二人が手を繋いで方向を見て同じ世界を歩く、他には誰もいない。それが私にとって綺麗な夜だ。つまり今日は汚い、薄汚れた夜と言うことになる。
「雨降りそうだな」
「そうね、じゃあ最後に灯籠だけ買って帰りましょ」
「そうするか。願い事はもう決めたのか?」
「えへへ、内緒〜」
端っこの石畳に座る私の目の前を男女の二人組が腕を組んで楽しそうに通り過ぎて行く。
これだから祭り事は嫌いなんだ。イライラする。幸せそうなカップルらしき物を見たからでは無く友達と騒げないからという訳でもない。主旨が間違っているからだ。
この「狐祭り」は亡くなった人達がこの世に縛られず、無事あの世に旅立てる様にと願いが込められた事が起源だ。それなのに射的だの金魚掬いだのと、まるで死者の冒涜じゃないか。
「どうしたの?お祭り、楽しくない?」
「当たり前じゃん。だって死んだ人の気持ちなんてこれっぽちも考えてないじゃん。こんなの楽しくない」
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2023/12/11 12:35
ヨシコウ
目標、1日一つの一物語を。
pixivでも小説書いてます。
同じ名前です。