小公女

①  風荒む中、落ちぶれ貴族のセーラーは、井戸に水汲みに行き、水が入ったバケツを井戸から引き上がる時、パリっと赤切れした手の傷が開いた痛みを感じた。 「痛った……」 だからポケットからハンドクリームの缶を取り出し開けるともう薬は角の方にわずかしか残ってなかった。 最後のひと塗りした時にセーラーは思った。 「あー もういやー こんなメイド奴隷生活!」 とセーラーはキレ、荒んだ目で辺りを見渡すと、いつも自分に卑猥な言葉を浴びせてくる、嫌なルンペンが、スキットルを咥え、壁を背に、それは油断した獲物の様にスヤスヤと寝ていた。 そのルンペンを見て。 『私が変わるのにちょうどいいわ』と思い、何かを吹っ切る様に、そのルンペンに水が並々と入ったバケツを投げつけ、「グワッハ!」と飛びおきたところにすかさず追加で《ボッコ!》と腹にケリも入れ、母の形見の古びた髪留めを外し、髪を振り解いたら、「交換」と言い、それを、思わなぬ小公女の襲撃にわけもわからずに地にもがいてうめいているルンペンのケツに刺す、「おっ! ギヤッヒ! うおっおおお……ワシはこう見えても元は騎士……」 「そう、だからなに、お前、暇なんでしょ、従いなさい、あなた今を持ってして私の奴隷騎士です、光栄に思いなさい!」
仙 岳美
仙 岳美
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