赤葡萄円舞

赤葡萄円舞
        ♪♪♪  騒音を鳴らして蜿蜒たる道を進んでいくと、峡湾の上にある道路へ出た。黄色く丸い標識には曲がりくねった英字が綴られている。そして砂と枯れ草をタイヤで擦り潰して通った。軈て赤茶の岩が聳えて空港会社や大手企業会社の建物が覗く。 「獣と生塵臭い。都市に向かっていますね。何故ですか」  鷹揚に片耳を傾けて、黒い鼻をヒュンと向けた。パロマは伸び切った柔毛を指先に巻きつけながら溜息を吐く。 「理由は後々分かる。所で、良い報せと悪い報せ、何方から聞きたい?」 「良い報せ」  エヴァンが乾いた笑みを浮かべた。然し明らかに痙攣しつつある口許と引き攣っている瞼。きっと悪い報せが二つあるんだろうなあ、とクルルは裾を握って唾を飲んだ。 「アンタら二頭はグラヴィナ大公から舞踏会に誘われたから基地に戻らなくて良い。だから、此のまま会場まで送迎する話になってる」  想定以上に冷えた声だった。残念と思っているのかと一瞥してみても、耳を立てて気怠そうな顔を向けてくるだけである。クルルは少し考えて、ワーイと歓声を上げ、喜んだ。踊り出すのかと思っている内に、当然不安気に眉を顰めて俯く。 「でも、私は関係ないから行けないんじゃないですか」
愛染明王
愛染明王