第7回N1 無垢で清らかで美しく

第7回N1 無垢で清らかで美しく
 親戚のおじさんが肺ガンで亡くなった。仲良くしてもらっていた事もあってショックを受けた。葬式中は声こそ出さなかったが、涙がボロボロ溢れてきた。精進落としの食事も喉を通らなかった。  あまり箸の進んでいない様子を見て、おじさんの奥さんのスミレさんが声をかけてくれる。 「…ショウタくん…どこか体調悪いの?」 その声は優しく、絹のように柔らかい。 「いや、おじさんが亡くなったのが…すごくショックで…」 「そうよね…一番仲良かったものね…」 スミレさんは同情するようにうんうんと頷く。 「あの人もショウタくんのことは気に入っててね、お兄さんの家行くたびに、『今年はまだ帰省してなかったかぁ…』ってしょんぼりしてたのよ…」 「そうだったのですか…」 私はスミレさんに恋をしていた。もちろん、良くないことだと分かっていたし、叶わないことも理解していた。しかし、それでも好きになってしまったのだ。その事を隠しながら生きていた。この時、最愛の人を亡くした彼女に何か気の利いた一言をかけられたらよかったのだが、私自身のショックも大きかったため、そこまで頭が働かなかった。
紫陽花
紫陽花
そこらへんに生えてる紫陽花です。 夢は漫画家、そのためにストーリーを練ってます。 小説や漫画はなんでも読みます。 バトル、ハートフル、ラブコメ、BL…なんでも御座れ!