君思えばそこに

 彼はきっとここにはもういない。いや、それはてんでから違っていて、はなから彼はいなかったのだろう。  ──何処にも。  全ては認識の問題だ──彼がそこにいると思えばきっとそこにいて、でも私の目には見えていないからきっとそこにはいない。 ◯  私は草原と言う場所に座って遠くの方を見ていた。きっと遠くの方を。そんな時に話しかけて来たのは彼だった。話しかけたと言うより一方的に話を始めたと言った方が正確だろう。  「君に似た者の話をしよう──」  その声からして男性の方であろうか。彼は私の右隣に居る。そして声の位置からして彼は立っているだろう。体の内側に響くような低い声が頭上から降ってくる。 ──とある部屋に一人の少女がいた。少女は目が見えなかったけれど、ただ一つ──彼女にだけ感じとれるものがあった。
めゐろ
めゐろ
飽き性であるが為に連載が更新されない場合がありますが、その時は──ああ、こいつ飽きたんだな、と思ってください。